映画「SUZiQ / スージーQ」

70年代に登場した女性ロッカーの代表といえば、Suzi Quatro!当時、ロックのカッコよさを私に教えてくれた唯一の女性アーティストでした。

可愛らしい顔立ち、サラサラのウルフカット、ピカピカのジャンプスーツ、一見アイドル的な風貌だけれども、彼女がベースを弾き始めると、

そこはもうロックン・ロールの世界へと誘われます。私は、「Can The Can」「48 Crush」よりも「Your Mama Won’t Like Me」のベース音が

たまらなく好きで、何度も何度も繰り返し、擦り切れるほどレコードを聴きまくっていました。

私の初の海外旅行は、1978年の夏でした。サマースクールでロンドンに1ヶ月滞在。憧れのイギリスに滞在するために、

成人式の着物はいらないと両親に直談判し、イギリスへの渡航費を出してもらいました。そして、アルバイトでお小遣いを稼いで、

初のイギリス旅行を実行したのです。Queenが誕生した国、、、ケンジントン・マーケットは必ず行く!映画「小さな恋のメロディー」で

ジャック・ワイルドとマーク・レスターが遊んだトラファルガー広場、、、絶対に行く、と楽しみをいっぱい抱えて!

すでに「全米トップ40」のオーディションに合格し、アシスタントDJとして活動を始めていたこともあり、初ロンドンにして、

初取材にもチャレンジ。その最初のアーティストがSuzi Quatroだったのです。

日本でも正式にアーティスト・インタビューをしたことがなかったのに、いきなり海外で大物ロッカーとインタビュー!それも憧れの人!

Suzi Quatroは当時日本でも、TVCMに出演するほどの人気アーティストでした。ロンドンでは、最高のチャンスが巡ってきたのだけど、

今思うと、怖いもの知らずの10代だったからできたのかもしれません。

Suzi Quatroといえば、バリバリのロッカーで、少々突っ張っているイメージがあったのですが、実際の彼女は、とても物腰が柔らかく、

インタビュー未経験の私であったにも関わらず、好意的で、素敵な時間を過ごすことができたことを覚えています。

内容はすっかり忘れましたが。。。。(通訳さんナシですから、覚えていたくないっていうのもあります汗)

場所は、伝説のRAKレコード。数々の名曲が生まれたスタジオがあり、今思うと貴重な経験でした。

Photo by Keiko Imaizumi

Suzi Quatroのドキュメンタリー映画「スージーQ」には、そんな素顔の彼女の姿がたくさん見ることができます。

そして1978年という年は、彼女にとっての過渡期にあり、新しい一歩を踏み出す前の大切な時期であったことを知りました。

ドキュメンタリーには、人生を音楽にかけるために、姉妹バンドから抜け、単身ロンドンに渡った経緯、ひとりぼっちのロンドン生活、

そしてようやくデビュー、パートナーとの出会い、そして現在までが描かれています。

1978年のSuzi Quatroは、イギリスでの成功を手中に収めながらも、母国アメリカへの思い、確執のあった姉妹との再会など、

精神面で乗り越えなければいけない壁にぶち当たっていた時代でした。

ロンドンでのインタビューから半年経たずして、彼女は、SmokieのChris Norman とデュエットした「Stumblin’ In」で、

全米最高位4位という初ヒットに恵まれ、母国に錦を飾りました。この曲は、ミディアムテンポのデュエット・ソングで、

これまでのロッカーのイメージとは異なる曲ではありましたが、アメリカでのヒットは、その後の彼女の活動の場を広げていくことになりました。

そして、ドキュメンタリーを通じて、改めてSuzi Quatroに影響を受けた女性ミュージシャンが多いことに驚かされました。

彼女に影響を受けたアーティストたちが、この映画のために惜しげもなく登場します。デボラ・ハリー、ジョーン・ジェット、

シェリー・カーリー、リタ・フォード、ゴーゴーズなどなど。女性に限らず、アリス・クーパーの姿もありました。

特にジョーン・ジェットには、Suzi Quatroへの純粋なまでの敬愛を感じました。

また、ラストシーンは、ジョーンとランナウェイズとして活動していたシンガー、シェリー・カーリーが、スージーのことを歌にした

オリジナル・ソングのパフォーマンスで締めくくってます。

Suzi Quatroの魅力は、女性ロッカーだからということではなく、

さまざまな定義を超えたロッカーとしてのカッコよさを持ち合わせていることなのだと思います。

彼女の絶頂期は70年代ではありましたが、80年代もそして今も、音楽だけでなく、作家、女優(当時出演し話題となった「ハッピーデイズ」の

映像もあります)、ラジオ・パーソナリティ、詩人、そして2児の母として、常に前向きに生き続け、地に足がついた1人の人間として、

表現者としての生き様に、多くの人が共感しています。とにかく、魅力的な女性であり、かっこいいロッカーであるのです。

Suzi Quatroドキュメンタリー映画「SuziQ」は、過去にとらわれず、その時代、その時代を生き続けている人間としての魅力に溢れた作品です。